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BtoB企業におけるネット広告と「認知」の重要性

近年、BtoB企業におけるマーケティング活動のデジタルシフトが急速に進んでいます。従来の展示会やDM、テレアポの他、Webサイト、オウンドメディア、リスティング広告、SNS、そしてリードナーチャリングを含むマーケティングオートメーション(MA)を利用する企業が増えています。そのなかで、ネット広告は新たな接点を築くための重要な手段となっていますが、成果を「リード数」や「CPA」などの数値に重きを置いてしまい、最上流にある「認知」の重要性が軽視される傾向があることは見逃せません。

「認知」がなければ検討されない

BtoB領域における購入・導入の意思決定プロセスは、一般的に長期化しやすく、かつ複数の関係者が関与します。たとえば、IT製品を導入する場合でも、情報システム部門、購買部門、現場部門、そして経営層と、複数階層の承認が必要となることが多くなります。このような複雑な意思決定プロセスのなかで、自社の商品やサービスが候補に挙がるためには、そもそも「その存在を知られていること」が重要になります。

つまり、「どれだけ良いサービスを持っていても、知られていなければ選ばれない」というのがBtoBマーケティングの現実です。これは認知がない限り、比較・検討の土俵にすら乗れないということを意味しています。

検索広告だけではリーチできない層

BtoB企業がネット広告を始める際、多くの場合は検索広告(リスティング)やリターゲティングから始めます。これらは“刈り取り型”広告と呼ばれ、すでに課題を自覚し、ソリューションを探している「顕在層」に対して非常に効果的です。しかし、BtoBにおいてはこの顕在層がそもそも少ないという特徴があります。

たとえば、業務効率化のソフトウェアを扱う企業があったとしても、すべての企業が常にそのジャンルの製品を探しているわけではありません。多くの潜在顧客は「問題にまだ気づいていない」状態です。だからこそ、今すぐ購入に至らない「潜在層」に対しても、ブランドやサービスの存在を知ってもらう“認知獲得型広告”が必要不可欠な手段となります。

BtoBならではの「信頼」と「想起」

BtoBでは「知っている企業かどうか」「信頼できる企業かどうか」が意思決定において大きな要素になります。価格や機能だけでなく、「この企業はよく見かける」「実績が豊富そうだ」「業界でよく名前を聞く」といった認知や印象が選定の後押しをします。したがって、広告を通じてまず「名前を覚えてもらう」「印象を持ってもらう」「知ってもらう」ことが、リードの質や商談化率においても非常に大きな影響を与えるのです。

ここで重要になるのが「想起性」です。たとえば、業務改善の課題が発生した際に、真っ先に思い浮かべてもらえるかどうか。これこそが「指名検索」や問い合わせ、資料ダウンロードにつながる最大の要因であり、その土台をつくるのが「認知獲得広告」です。

認知を獲得するためのネット広告施策

BtoB企業が認知を広げるためには、以下のような広告施策が有効です。

  • ディスプレイ広告(バナー広告)
     業種や職種などでターゲティングし、視覚的に訴求可能。バナーはブランドロゴやキャッチコピーを活用して、印象を残すことが目的。
  • コンテクスチュアル広告
     メディアや関連ニュース文脈に広告を配信することで、関心の高いユーザーに自然なかたちで露出が可能。
  • 動画広告(インストリーム、アウトストリーム)
     ストーリーテリングを交えた動画でブランド価値や導入メリットを伝えられる。視聴完了率やリーチ数で認知の広がりを把握しやすい。
  • SNS広告
     職種・業界・役職などでターゲティングも可能。接触からCVまでの一貫した設計がしやすい。

認知は投資、効果は“長期視点”で

BtoB広告において認知施策は、リード数やCPAのように短期で成果が見えにくいことがあります。そのため、社内から「効果が分からない」「リードが増えていない」といった声が出ることも少なくありません。しかし、ブランドリフト調査などで「認知が後の成果にどう貢献したか」を見える化することも可能です。

また、「広告によって接触したユーザーが、数ヶ月後に問い合わせをしている」といった行動を、CRM等を連携することで追跡することもできます。

認知がブランド資産を育てる

ネット広告を「刈り取り型」だけで運用し続けると、やがて新規リードが枯渇していきます。逆に、「認知」を積み重ねていけば、指名検索数が増え、営業の初回提案の信頼感も向上し、結果としてLTV(顧客生涯価値)も高まっていきます。つまり、認知施策は「広告のための広告」ではなく、「企業価値そのものを育てるための投資」なのです。

BtoB企業にとって、ネット広告は単なるリード獲得の手段ではなく、長期的なブランド価値の醸成や信頼の構築に欠かせないツールです。その中でも「認知」は、すべてのファネルの起点となる重要なステップです。今すぐ成果に結びつかないように見える施策であっても、ターゲットに「知ってもらう」ことこそが、未来の成果を形作る第一歩になります。

企業規模や業種を問わず、今後の広告戦略において「認知」の強化に取り組むことは、継続的な成長と競争優位の確立に直結するといえます。